2002年04月27日
J2 第十二節
セレッソ大阪−サガン鳥栖
皇子山陸上競技場
2−1でセレッソ勝利
バックスタンド(?)芝生席、センターサークル外周

 関西在住なもので駒場にも鹿島にも脚を運んだことがない。それゆえ噂に聞くサポーターの雰囲気が実際どんなものか知らない。ただ、甲子園のタイガースファンが持つ熱狂は知っている。だから甲子園を引き合いに出す。
 甲子園という場所では誰もが期待する。すり鉢の底でプレーする選手の一挙手一投足に四万五千の視線が降り注ぐ。ボールの一球にどよめき、バットの一振りに静まり返る。観客の誰もが異常なほどアドレナリンを分泌し、それが集まって球場を覆っている。それは興奮であり、同時に殺伐さでもある。緊張が絶えずこの球場には息づき、選手はそのプレッシャーに晒されながらマウンドに上がり、バッターボックスに立つ。
 そのプレッシャーが、ない。
 滋賀県大津市皇子山陸上競技場へ入場してすぐにそう思った。メインスタンド以外すべて芝生席となっているこの競技場外周部、ゴールデンウィークの爽快な太陽の下にカップルや家族連れがめいめいピクニック用のシートを敷いて座っている。芝生の上に直接腰をおろすと、芝の柔らかさ、陽光の心地よさにゴロリと転がりたくなる。なんとも遠足気分を助長する客席である。ピッチと芝生とは地続きになっており、高低差はほとんどない。おまけに両者を隔てるべき仕切りは高さ五十センチに満たないであろうコンクリート壁だけだから、大人は言うに及ばず子供でさえも容易に越えられる。観客の乱入など想定していないのだろう。暢気であり悠長でさえある。設備に文句をつけるのはお門違いだが、時計が無いことと人の手でめくるパネル式のスコアボードがまたのんびりとさせる。おまけにピッチと地続きのこの高さで立ち見が許されず、選手と同じ目線でゲームを観戦することになる。なんだか観戦ではなく練習の見物にやってきた気分である。そんなだからメモを片手の観戦などこの場にそぐわないし、もちろん殺伐としていなければ緊張もない。第三節のベルマーレ湘南戦以来九ゲームぶりの観戦となる私は、ああ、セレッソはすっかり染まっちゃったんだなあ、と実感してしまった。

スコアボード
(バイトが手で差し替えます)

 そんな客席の雰囲気をそのまま反映したかのようにゲームが始まる。サガン鳥栖の守備はとりたてて強いようには見えないが出足はいい。とりあえず中盤で繋ごうとするセレッソのパスをカットしては速攻に持ち込もうとする。ただ、これがJ2の特徴なのだろう。最後にセンタリングミスやパスミスをする。詰めが甘い。それでもサガン鳥栖はチャンスを何度か作り出す。私が見ていたサイドではFWの小石がなかなかよい。前線でサイドに開いてボールを受けてライン際を駆け上がったり、実際はオフサイドになったが、きれいな抜け出しを何度かみせた。一方でパスの繋がらないセレッソはアバウトサッカーに終始する。なんだか戦術が有るのか無いのかわからない状態で、とりあえずキープしてはその場その場で凌ぐ。天皇杯のパスサッカーは何処へいったのやら。そういえば、あのメンバーでこのゲームも出場しているのは大久保を含めても五人だけ。こう見ると原信生あたりはパスサッカーにかなり適応していた人材だったのかもしれないと思う。 
 それでも先制をしたのはセレッソ。前線でパスを受けた大久保、マークについていた二人を交わしてのシュート。まったく個人の力である。その八分後に挙げた大久保の二点目はトゥルコビッチの賜物。トゥルコビッチが右サイド、ゴールラインぎりぎりで粘り、マイナスへ折り返したところに大久保が合わせたのだ。どうにもセレッソ、ぐだぐだした中盤からなんとなく前線へパスが通り、あとは個人の力を生かしたパターンでしか点を取れないようだ。レッズの縮小再生産のようなチームと成り果てている。J1チームをきりきり舞いさせたあれから四ヶ月。十八史略には『士別三日、即當刮目相待』とあるがこの変貌振りはどうだ。

プレーシーン
(手の届く近さでプレー)

 しかしそんな前半に輪をかけて酷いのが後半。五分に鳥栖が挙げた得点はフリーキックから。前述の小石がDFを引き連れたまま動いてゴール前にスペースを作り、そこへ誰かが飛び込むかと思ったがそうはならず、結局ゴール前の混戦から宮川がゴール。ううむ。ぽっかりと空いたスペースを誰も利用しないあたり、やはりJ2か。小石は技術は足りないもののスペース感覚はかなりよいと思う。スペースを作れて使える。運動量も多く、プレーエリアも広い。もっともこの両チームだったからこそ抜きん出て見えただけかもしれない。セレッソの大柴にもああいったプレーが欲しいところだ。八分ぐらいにはペナルティエリア右のフリーキックからセレッソが連続セットプレーの猛攻。ヘディングはバーに嫌われ、久藤のシュートはGKシュナイダー潤之助が弾いてサガン鳥栖が守りきる。このあたりまでは良くも悪くも見ていて面白かったが、十二分、全く機能していない風だった大柴に代わって徳重がピッチに立ったあたりから様相は変わる。いや、十三分に鳥栖がDFを落としてFWを投入したのが直接的な原因だろう。とにかく中盤の狭いスペースで潰しあいが延々と続く。しかも田坂、中井といったセレッソの守備的MFのコンビには展開力がまるで無く、ショートパスを繋いでばかりだから鳥栖がボールをまんまと右サイドへ追い込んでしまう。それにつられてFWも偏り、私からは向こうのサイドで玉蹴りをしている以外なにもわからない。やはりサッカーは俯瞰できる環境で観るに限る。そんな時間帯が二十分以上も続いて客席もまったりとしてきた。ついでにセレッソ守備陣もまったりとしたのか失点には繋がらなかったもののミスを連発する。DFとGKのお見合い、DF間の連携ミス。やはり守備は整備されていないらしい。プレッシャーが掛かった状況下では簡単に崩壊しそうだ。

バックスタンド
(バックスタンド芝生席。…狭い)

 後半も四十分頃になると客席もだれてしまい「適当に前へ」「とりあえず前へ大きく蹴っとけ」の声が多くなる。初出場、初スタメンの中井が水分補給に来ると「中井、あとすこしやぞ」「中井がんばれよ」の声援。初々しく会釈する中井。久藤には「久藤、家で嫁はん待ってんぞ。がんばれ」それに右手で応える久藤。サポーターと選手の距離が近く、まるでホームメイドのチームである。この温かさはJ1のチームには感じられない。観客と選手の間にある一線がないのだ。これがよいのかどうかはわからない。
 結局ゲームはセレッソが勝った。ただ、私が見るところ問題点は山積している。鳥栖は守備的ではなかったが、それでもセレッソはまったくパスを回せず大きな展開も無かった。相手が攻撃力のないチームだったからよかったが、守備陣は相変わらずJ2レベルにさえ達していないと思う。このゲームを見るまで私は、相手がべったりと引いてそのうえ森島と西澤に密着マークがついているからセレッソは勝てないのだろうと思っていた。しかしどうやらそうでもないらしい。J1へ上がるためにDFの整備はやはり急務だ。それと全体を見渡せるゲームメーカーが必要なのではないだろうか。そして、サポーターからのプレッシャーもやはり必要だと思う。ただ現在の関係を羨ましく思いもするし、それを続けたままJ1へ上がれればそりゃあいいのだろうけど、たぶんそんなわけにはいかないだろう。これについては結論を見出せないでいる。セレッソ大阪の前途は多難だ。


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